ひまわり
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「わぁ、素敵な所」
ラベンダーと向日葵畑のコントラストに思わず叫んだ後、マリューはバツの悪い表情で隣に座るムウを見た。 ここには戦闘で酷い傷を負ったムウの静養に来たというのに、自分がすっかり浮かれていることに気が咎めたからだ。 「待っていて、すぐに車椅子を出すから」 そう言って車を降りたマリューをムウが引き留める。 「歩くよ。肩を貸してくれないか？」 包帯も目以外はほぼ取れ、医者からもそろそろリハビリを兼ねて動いても良いと言われ、それならば田舎にでも行ってということになり、今回の静養となったわけである。 ムウの言葉を聞いてマリューは、だが不安気な表情をした。 「大丈夫？ まだ痛むのでしょう？」 確かに傷はまだ痛む。だが、いつまでも車椅子の住人になっていたくないというのがムウの本音だ。 「大丈夫」 俺は不可能を可能にする男だから…… そう言って笑ってみせると、マリューの顔から不安な色が抜け、彼女はクスリと笑った。 「そうね、貴方はそういう人だったわね」 そう言うと、マリューはムウに手を貸して彼を車から降ろした。 二人の眼前には、閑静な家が一軒建っている。 静養の為にと、貸別荘を借りたのだ。 辺りはラベンダーと向日葵畑に囲まれ、この別荘以外の建家は見あたらない。 「へえ、結構良い所だな」 「そうね、静かだし」 とにかく、マリューがムウに肩を貸しながら家に入ろうと二人は歩き出したが、やはりムウの方はまだまだ傷が痛むらしく、マリューに全身を預けてしまうこともしばしば。その度に彼女の顔にも苦痛の色が走ったが、それでも二人は歩いた。 まるで大地を踏み締めて、生きていることを感じ取ろうとするかのように…… ムウの頼みで、家の周囲を一周する頃には、マリューはすっかりばてていたが、 それでも気遣ってくるムウには、笑顔を返した。 「ここでマリューさんと二人きりでゆっくり過ごせるなんて、ラッキー以外の何者でもないな」 ムウの言葉に、思わず顔を赤らめるマリュー。 初夏の風が、向日葵とラベンダー畑から花の香りを乗せて運んでくる。 その風の中で、二人は誰もいないことを良いことに、抱き合い、口唇を重ね合ったのだった。 口唇が離れると、ムウがそっと囁いた。 「君は俺のひまわりだね」 「ムウったら、口が上手いのね」 「本当のことさ」 （貴方こそが、私の向日葵なのよ） いつでも、大輪の向日葵のような笑顔と心で互いが違いを見守りたい…… ムウの言葉に頬を染めたつつ、そんなことを考えていたマリューの耳元に、ムウは素早くキスをした。 Fin ＊かいせつ＊ ムウ×マリューの第三弾です。 2005/07/19 かくてる♪ていすと 蒼乃拝 |