闇の中で
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(やめてお願い！！ 彼をどこにも連れて行かないで！！）
「ムウ！！」 暗闇の中、悲鳴をあげて飛び起きる。 でもそこに広がるのは、闇の安寧……そこで彼女はホッと息を吐く。 「夢か……」 ベッドの上に半身を起こしながら傍らを見ると、マリューの悪夢など知ることなく、ムウが安らかな寝息をたてている。 「ムウ……」 今でも、苛まされるムウを失っていたかもしれない恐怖と悲哀。 彼が傍にいても消えることのないマリューの心の傷。 震える細い指が、ムウに触れた。 男らしいきりりとした眉と、今は閉じられている優しい眼。スッキリと通った鼻梁に端麗な口元。 彼の眠りを妨げないよう、注意深く、だが愛しげに彼女は彼に触れていった。 「ん……」 ムウの寝息の変化にマリューはビクリとしたようにその手を止めたが、ムウの方は再び安らかな寝息をたてはじめた。 「良かった……」 あなたが無事で…… ザフトと、そして地球連合との戦いで愛しい人を失った人間は今も慟哭に絶えているだろう。 それを思うと、こうして愛しい男の腕の中で充足感に満たされながら眠っていることに対して罪悪感さえ湧き出す。 でも……でも、神に感謝せずにはいられない。彼の命を救ってくれたことを……たったひとつのマリューの大切なものを、その腕から奪い取らなかったことを…… 「おやすみなさい、ムウ」 端麗な口唇に掠めるくらいの口付けを残し、マリューは再びベッドに横たわり、そしてスヤスヤと眠りに落ちる。 暗闇の中、隣に眠るムウがそっと目を開け、愛しげにマリューの髪を優しく撫でていたことを、彼女は知らない。 Fin ＊かいせつ＊ ムウ×マリューの第二弾です。 2004/06/19 かくてる♪ていすと 蒼乃拝 |