空が俄に鈍色に彩られはじめたと思ったら、窓外は突如激しい雨に見舞われ始めた。
「やはり降ってきたな、この調子だと……」
呟きが終わらぬうちに空に閃光が走り、辺りが一瞬真昼のように明るくなる。次の瞬間激しい轟音が鳴り響いた。
「キャァァァァァァァァァーーーーー！！」
雷の轟音に勝るとも劣らぬけたたましい悲鳴をあげながら部屋に飛び込んできた華奢な躰が、間髪を入れずに窓際に佇んで外を眺めていたダグラスの身体にしがみついてくる。
予想通りの展開に、ダグラスの口元に微かに苦笑が浮かび上がった。毎度のことながらヘネラリーフェの雷への反応は凄まじいものがあるなと、思わず他人事のようなことを考えてしまう。
再び空に蒼白い稲妻の閃光が走り、辺りを眩しいほどの白い光で包み込む。声もあげられず、だがヘネラリーフェは尚一層ダグラスにしがみつく腕に力を込めた。
「やれやれ……これで軍人になろうなどと、よく思えるものだ」
ダグラスの口から、苦笑を含んだ呟きが零れ落ちる。
ビュコック家に引き取られた一〇歳の時ならいざ知らず、あれから既に五年……来年には士官学校に入学しようというヘネラリーフェが未だに雷を怖がり、まるで幼子のようにダグラスに抱き付いて離れないなどとは、現場を目の当たりにしなければ恐らく誰も信じないだろう。
それほどに、普段のヘネラリーフェからは想像もつかないほどの意外な姿。こんな姿を知っているのは、恐らくビュコック家の者だけだろう。多分、足繁く通ってくるアッテンボローでさえも見たことのない姿に違いない。
「まだまだネンネだなリーフェは。それでは戦場の爆音にも耐えられないぞ」
微笑ましさを隠さぬままの苦言に、だが応える声はなく、細い肩を微かに震わせながら、ただただダグラスにしがみつくだけである。
「しょうのない奴だな……」
溜息混じりにそう呟きつつ、ダグラスは壁に凭れるようにして床に腰を降ろすと、ヘネラリーフェの頼りなげな肢体を膝の上に抱き上げ、雷から遮るべく包み込むように抱き締めた。
「来年から寄宿舎に入らなければならないっていうのに、こんなことで大丈夫なのか？ 俺は傍にはいられないんだぞ」
言ったところで返事が返ってこないことはわかっている。怯えきっている今のヘネラリーフェの耳には、何も入ってきてなどいないのだから。
「いつまでも甘えん坊なくせに、それでも軍人になってひとり宇宙に出ようだなんて……矛盾の固まりだな、お前は」
どうしてそこまで軍人になることに拘るのか……いや、わかっている。その原因の何分の一かは、明らかに自分の責任なのだということが。
瞬かない星を見に行く……ただ一言のこの言葉が、ヘネラリーフェを死地へと駆り立てる起爆剤になってしまったのだ。
できることならヘネラリーフェを戦場などにやりたくはない。いや、それ以前に士官学校になどやりたくない。いっそのことヘネラリーフェが一六歳になったその日に入籍でもして……一時はそこまで思い詰めたダグラスだったが、だがそれが必ずしもヘネラリーフェの幸福に繋がるとは言い切れないことがわかりすぎるほどわかり、諦めざるを得なかった。
ダグラスも軍人なのだ。軍人である以上、いつどこでどのように命を落とすか予測さえもできない。それ故、哀しませるかもしれないとわかっていながら、ヘネラリーフェに対して結婚を申し込むことなどとてもできなかった。
愛しくてたまらない存在だからこそ、その思いは尚強くて……軍人を、いや、人を愛することを後悔させるような境遇にヘネラリーフェを追い込むことは、ダグラスにはできなかった。
どれくらいの時間、そうやってひとり考え込んでいたのだろう……気が付けば雨足は弱まり、雷も遠のいたようである。辺りは微かな雨音が響く静寂の世界だった。
「リーフェ、もう大丈夫だぞ」
腕の中の温もりに声をかける。が、ヘネラリーフェは微動だにしない。
「？」
異変を感じ、何気なく彼女の顔を覗き込んだところで、ダグラスはクスリと忍び笑いを洩らした。
「まったく……実にいい度胸だよ、お前は」
クスクスと楽しげに笑うダグラスの腕の中で彼の温もりに守られながら、ヘネラリーフェはスヤスヤと寝息をたてながら安らかな表情で眠っていた。
雷が怖くなくなったのは、いつからだっただろうか？ 今ひとつしっかりとした記憶がないことに戸惑いを覚えてしまう。
士官学校に入学して暫くは確かに怖くて、雷が鳴り響くたびに枕を抱き締めながら必死に悲鳴をかみ殺したことが思い出される。
だが、その後の記憶が曖昧だ。ただハッキリしていることがある。それは、ヘネラリーフェが雷に怯えなくなったのは、ダグラスが逝ってしまって以降ということである。ただし、それに気付いているのはビュコック夫妻だけであり、肝心要の本人はそのことをまったく意識していないという異様な事実が確かに存在していた。そして……
『キャァァァァァァァーーーーー』
けたたましい悲鳴をあげながら、女が男に抱き付く。外は雨、蒼白い稲妻が空を分かち、辺りは白光に包まれて一瞬真昼のように明るくなった。
そんなシチュエーションを映し出すソリビジョンの画面を、毛足の長い絨毯の敷き詰められた床の上に寝そべって凝視しながら、ヘネラリーフェは幾分つまらなさそうに枕を抱えながら溜息をついた。
「なんだか、ワザとらしい怖がり方よねぇ〜〜〜」
その台詞に、横にいたロイエンタールが思わずクスリと忍び笑いを零す。
「なんだ、まるで雷など怖くないと言っているようだな」
「怖くないわよ」
からかいを含んだロイエンタールの言葉に、ヘネラリーフェはアッサリとこう答えた。
「ほ〜〜〜ぅ」
信じられないという表情でロイエンタールが揶揄するように感嘆の声を挙げる。ヘネラリーフェの意地っ張りな性格を知り尽くしている彼にしてみれば、その態度も致し方ないものであろう。が……
「あら、雷なんて戦場の爆音に比べたら、大したことないじゃない」
戦闘を引き合いに出されては、さしものロイエンタールもそれ以上突っ込みようがない。確かに、戦場のあの爆音に比べれば、如何に轟音とと言えども雷など大したものではない。
しかも、最前線にいたヘネラリーフェの身は雷どころではない危機に耐えず直面していたことにもなる。そう、命の危機だ。そんな生と死の間に否応なく立たされていたことを思えば、確かに雷など大したものではない。
「なるほどな……では、お前には枕も俺の胸も必要ないということか」
些か残念そうな口ぶりでロイエンタールが呟くように言った。
「枕？ 何よそれ」
言葉の意味がわからず、キョトンとした表情で聞き返してきたヘネラリーフェに、ロイエンタールは笑いながら言葉を続けた。
「女ってのは、雷が鳴ると必ず枕にしがみつくんだ。よほど俺の方が役に立つと思うのだがな」
「ふ〜〜ん……残念ながら私には関係のない話ね。ところで、ちょっと聞くけど、それってつまりそれだけ貴方が女性とそういうことに至っているってことなのよねぇ？」
ロイエンタールと枕が一緒にあるということは、つまりそれは寝室のベッドの上ということくらい、ヘネラリーフェにだってわかる。別に嫉妬しているわけでもないが、思わず聞き返してしまうあたり、案外彼女も気にしているのかもしれない。ただ表面に出さないだけで。
「なんだ、妬いているのか？」
自分がいかに漁色を繰り返してきたのか、今更隠し立てする気もないし、今現在はヘネラリーフェ一筋で後ろめたいことなど何一つしていないロイエンタールは、それでも過去の所業が所業なだけに端麗な口元に些か苦笑の色を湛えながら、そう零した。
「別に……」
ヘネラリーフェは、うつ伏せに寝そべりながらそっぽを向くように、ロイエンタールがいる方とは反対側へ顔を背けてしまった。
「リーフェ」
少々からかいすぎたかな……些か後悔の念に捕らわれながら、ロイエンタールは気を取りなすようにヘネラリーフェの背をポンポンと軽く叩いた後、今度は宥めるように撫でさする。と……
「本当はね……」
可憐な口元から呟くような声が零れ落ちた。
「本当は、苦手だったの」
ヘネラリーフェの背を撫でる手が止まる。何が？ などと愚かなことを聞くようなロイエンタールではない。彼は黙って言葉の続きを待った。
「雷が鳴るたびに、ダグに抱き付いて震えていたの」
自嘲するように忍び笑いを洩らしながらヘネラリーフェが淡々と言葉を紡ぐ。
「…………」
ロイエンタールの脳裏に、カプチェランカで自ら手を掛け殺した男の残像が浮かび上がる。あの時あの瞬間、ヘネラリーフェは縋る胸を無くしたのだ。そしてそうしたのは他ならぬ自分で……そう思うと、やるせなさが募る。
そんなロイエンタールの心情を思いやってか、ヘネラリーフェが俯かせていた躰をコロンと仰向け、青緑色の眼差しを彼に向けた。
「ゴメン……ダグのこと思い出させちゃったね」
それを言うならヘネラリーフェの方が、彼の面影を思い出えばより辛い筈だろう。
気を取り直すように、ロイエンタールが口を開いた。
「今は？」
それほどに雷に怯えていたというのに、本当に今は平気なのだろうか？ 素朴な疑問が沸き上がった。
ロイエンタールのその問い掛けに、だがヘネラリーフェは一瞬のことながらも複雑な表情を見せる。
「多分……」
返答は曖昧なもので、ロイエンタールはどう受け取ったらよいものかと戸惑いを隠せない。
「多分とは、どういうことだ？」
「ダグが逝く前までのことはハッキリ覚えているの。とにかく雷が怖くて怖くて、でも士官学校は寄宿舎だったから当然ダグはいないじゃない。で、それこそ貴方が言うように、枕を抱き締めながら毛布を頭から被って、必死で悲鳴を押し殺していたのよね。でも……」
でも、その後の記憶が今ひとつハッキリしないのだ。ダグラスが逝ってしまった後からイゼルローン要塞へ赴任するまでの間、自分は雷に対してどう対処していたのだろうか？ あれほど怯えて縋っていた自分が、如何に縋る胸を無くしたからと言っても、そう簡単に雷を恐れなくなれるものなのだろうか……
だが、確かにあれ以来ヘネラリーフェは雷に怯えて悲鳴を上げたことはない。捕虜となってロイエンタールの元に連れてこられてからも、何度か雷には遭遇している。が、特に怖いとは感じなかった筈である。
まあ、あれだけの重傷を負った直後ということと、ロイエンタールから受けた屈辱的行為の所為で、精神的に雷などに怯えているどころじゃなかったとも言えるのだが。
「なんだか、記憶がボンヤリしているの。でもまあ、ダグが逝っちゃった後って、私も結構精神的にどん底だったし、単に思い出したくないだけかもしれないわね」
極力明るい声でそう言い放つと、湿っぽい話はもうやめにしましょうと言いながらヘネラリーフェは再び躰の向きを返ると、すっかり忘れ去られた存在になっていたソリビジョンへと目をやった。
ロイエンタールは、返事の替わりに彼女の琥珀色の柔らかな髪に指を絡めるとクシャリと掻き乱してやる。そうしながらも、だが彼はヘネラリーフェ本人でさえも図りかねている彼女の真実を垣間見たような気がしていた。
もしかしたら、ヘネラリーフェは雷が怖くなくなったのではなく、そう思い込んでいるだけではないのだろうか……と。
とは言っても確かめるわけにもいかないし、またそんなことをすれば折角塞がった傷を再び抉るようなことにもなりかねない。今の会話はひとまずこの場限りの戯れと考えることにして、ロイエンタールは意識を現在へと切り替えた。
ヘネラリーフェは相変わらず寝そべってくつろいだ状態で、ソリビジョンの映像に向かって毒づいている。ロイエンタールは、つい可笑しくなって口を挟んでしまった。
「文句を言いながら見るほど価値がある作品なのか？」
「結末が気になるの」
画面は再び雷鳴轟くシーンへと突入している。恐らくクライマックスなのだろう（←どんな映画なんだ？ ^^;; ）
『キャァァァァァァァーーーーー』
女優が恐怖に顔を引きつらせながらけたたましい悲鳴を上げる。
ふと、外の様子が気になり、ロイエンタールは何気なく視線を窓外へと飛ばした。
先程まで煌々と降り注いでいた月光が、いつの間にか漆黒の闇に覆い尽くされている。どうやら天候が崩れてきているようだ。
と、間髪を入れずほんの一瞬空に青い稲妻の閃光が走った。直後、まだそれほど激しくはないものの、雷鳴が轟く。
気にしないでおこうと思えば思えるそれに、だがヘネラリーフェは敏感に反応し、慌てて身を起こした。
「どうした？」
「う……ううん、なんでもない」
今現在に関しては珍しくも思惑も毒も含まれていないロイエンタールのその問い掛けに、だがヘネラリーフェは幾分引きつった笑みでもってそう答えた。
何気なさを装いながらも、だた彼女の細い指が絨毯のうえをソロソロと這い、枕の端に辿り着く。その瞬間、雷鳴が先程よりも大きく轟いた。
ヘネラリーフェの細い肩がビクリと震えるのがロイエンタールにもハッキリとわかった。
「おい……お前、やっぱり……」
雷が怖いんじゃないのか？ そう問おうとしたロイエンタールの言葉は、ヘネラリーフェの声に遮られた。
「違うもん！！」
が、言ってることとやっていることがチグハグである。違うと言いつつ、ヘネラリーフェの腕の中には枕がしっかり抱きかかえられていた。
そうこうするうちに、雷鳴は激しさを増すばかり。蒼白い閃光が漆黒の闇色の空に走った直後、辺りは真昼のような白光に包み込まれ、激しい雷鳴が轟き、地表が一瞬地震のように揺れた。
「＄＃×◆％＆●？＄＃！▼」
声もなく、ヘネラリーフェが枕にしがみつく。
「枕なんかより、俺の方が余程頼りになると思うんだがなぁ」
ロイエンタールが苦笑を湛えた声音で溜息混じりにそう呟くが、どうやらヘネラリーフェの耳には入っていないようである。
ロイエンタールは優美な指を伸ばしてヘネラリーフェの頬にそっと触れると、幾分強引に顔を上げさせた。涙に潤んだ青緑色の双眸が、だが意固地な光を湛えて金銀妖瞳を見返してくる。
「怖いなら怖いと素直に言え」
「だから、怖くないって言ってるでしょ！！」
こんな雷ごとき、戦闘に携わっていた頃を思えば恐怖でもなんでもない。その筈なのに……いや、そう思い込んでいただけなのか？ どうして今更雷に怯えるなんて子供のようなことを自分はしているのか、ヘネラリーフェの思考は雷への恐怖と共にそんな疑問でパニックを起こし掛けていた。
「なんで、なんで今更……だって、ずっと平気だったのよっ！！」
捕虜になってから、いやダグラスを亡くして以来この方、雷を怖いと思ったことなどなかった筈なのだ。なのに……
怖いと肯定する言葉を自らで口にしているとは意識していないようだ。だが、ロイエンタールはその姿から、ヘネラリーフェの強がりが既に限界を超えていることを悟った。
「違うだろ！！ 違う……怖くなくなったんじゃない、怖いと思う気持ちを無くしていたんだ！！」
思わず大声で叫んでいた。そうなのだ、怖くなくなったのではなく、ダグラスを亡くしたショックで、怖いとか哀しいとか辛いといった感情を失ってしまっていたのだ。
それらは一三艦隊の面々と出会ったことで一時は氷塊したが、それも捕虜としてロイエンタールの元に連れて来られたことと、彼に受けた屈辱的な扱いの所為で、再び精神を病み感情を破綻させた。
つまり、雷を怖がらないヘネラリーフェの方が精神に異常を来していたということなのである。
ヘネラリーフェの、ダグラスの死の直後の不安定な精神状態が今にして判りすぎるほどにわかって、ロイエンタールの胸を痛みが突き抜けた。同時に、彼女への愛しさが尚一層募る。
「強がるな。怖いなら縋れ……今のお前こそが、本来のお前の姿なのだから……」
俺の前でだけは強がるな……俺の前では、お前はいくらでも弱さを曝け出していいんだ。俺自身が、お前の前ではそうなのだから。それとも……
「それとも、俺はそんなに頼りがいのない男か？」
こっちへおいでと言うように腕を広げて見せながら、真摯な眼差しでそう語りかけるロイエンタールの言葉に、だがヘネラリーフェは瞳を潤ませながらも必死で否定しようと首を横に振る。
「リーフェ！！」
焦りを含んだロイエンタールの声と、先程までのものとは比べものにならないくらいの凄まじい白光と共に雷鳴が轟いたのは、ほぼ同時だった。
それこそ、ミサイルか何かが炸裂したのではないかと思うほどの眩しすぎるほどの光と轟音と振動……
「キャァァァァァァァァァーーーーー！！」
その途端、悲鳴をあげながらヘネラリーフェが華奢な躰をロイエンタールにぶつけるようにして抱き付いてきた。意地も何もかなぐり捨てて……いや、捨てざるを得ないほどの恐怖に怯えているのだ。
雷鳴が轟くたびに、声もなく細い腕で必死でロイエンタールに縋りついてくる。
抱き締めると微かに震えているのがわかった。
「やれやれ……意地っ張りだとは知っていたが、これほどまでとはな」
苦笑しつつも、ようやくヘネラリーフェを抱き留めてやれたことに安堵の溜息を吐きながらロイエンタールが呟く。
「ダグラスもさぞや苦労したことだろうな」
かつて、束の間の友誼を交わした男の顔が脳裏に甦る。
ふと腕の中のヘネラリーフェを見やれば、ギュッと目を閉じて大人しくロイエンタールに全てを預けている。愛しさと悔恨と痛みが交錯する想いを抱きながら、彼はヘネラリーフェの肢体を強く抱き締めてやる一方で、彼女の琥珀色の髪に指を絡め弄んだ。
恐らくダグラスも、雷に怯えるヘネラリーフェを抱き締めてやりながら、こうして飽きることなく彼女の髪を撫でてやっていたに違いないと、確信めいたものを感じながら……
彼はそうしながら誓ったのだろう。何度出撃しようとも、必ずヘネラリーフェの元に生きて帰ってこようと。腕の中の温もりを守る為に……
「卿の代わりは出来ない。その度量の大きさにはどうしたって敵いはしない。だが……だが俺は俺のやり方でリーフェを守ってみせる」
『やれるもんなら、やってみやがれ』
不敵な声が聞こえたような気がした。
気付けば、雷鳴は遠のき雨足も幾分弱まっている。嵐の峠はどうやら越したようだ。
「リーフェ、もう大丈夫だぞ」
だが、胸に埋められている彼女の顔を覗き込んだ次の瞬間、ロイエンタールは唖然とした表情で動きを止めた。
ヘネラリーフェは眠っていた。全ての弱味を曝けだし、だがようやく素直に縋れる胸を得た安堵感を安らかな寝顔に託しながら……
「しょうのない奴だな」
どこか苦言めいた呟きは、だが端麗な口元からこぼれ落ちた仄か笑みが柔らかく覆い隠した。
キリ番１５００番をゲットされた「せいちゃん」のリクエストは、気の強いリーフェの外伝ということで、今回はリーフェの苦手な物シリーズ第一段！！（←ってことは、第二段もあるってことか？）ということで、ロイと言えばお約束な『雷』をお題にしてみました。
怖いくせに怖いと言えず、目をウルウルさせながらもロイエンタールよりも枕に抱きついちゃうリーフェ……ってのが、如何にも気の強い彼女風かなぁと思って書いたのですが、いかがだったでしょうか？
実は、今回のお話はコミカルなお話にするつもりだったんです。駄菓子菓子！！ 蒼乃、ＢＧＭを間違えました（爆） コミカルにするつもりだったのに、ムーディーなジャズバイオリンなサウンドなんて選曲してしまった為に、何やらとんでもなくシリアスな展開になってしまいましたわぁぁぁぁぁ（^^;;）
ま、普段の姿からは想像も出来ないような怯えまくるリーフェにグッときちゃって、かいぐりしたくなっちゃったロイの姿っていうのは、表現できたかしら〜〜とは思いますが（笑） お粗末様でした……m(_ _)m
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