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長さ70.9cm、反り1.4cm、目釘穴1個、元幅3.15cm、先幅2.05cm、元重ね0.7cm。
鞘は、美術品とも言われるもののような漆塗りに蒔絵という華やかなものではなく、金箔の欠片も見られない鋼色の鉄拵え。
鞘に結びつけられた房付きの下げ緒と柄糸は、蘇芳色。
長曽祢興里入道虎徹作の最上大業物であるこの名刀の鍔に青龍と朱雀が彫り込んであることから、ブラウシュタット家ではこの太刀を代々『龍鳳剣」或いは、東と南の神将の姿から『破邪の剣』と呼んでいた。
やがて、柄糸と下げ緒の色と、そして武人である代々の持ち主がその太刀に数多の血を吸わせたことから、いつしかそれは『蘇芳』と呼ばれるようになる。
そして、今その剣は、ヘネラリーフェの手元にある。
すうっと息を吸うと、ヘネラリーフェは腰の太刀の柄に手を掛ける。
「はぁっ！！」
一気に抜刀に、空気を薙ぎ、そして一瞬の間に太刀は鞘の中に戻った。
「また、つまらぬ物を切ってしまった……」←（笑）
”キン”という太刀を鞘に収める軽い金属音に続いて、ザザザ〜〜と竹の木が倒れる。
「リーフェ、お前また庭を壊したな〜〜〜！！！」
ロイエンタールの少々怒りを含んだ叫び声が背後から覆い被さる。
「あはは〜〜 ごめ〜ん」
ピンク色の舌をペロリと出しながら、ヘネラリーフェが悪びれずに振り向く。
いでたちは白の小袖に紺色の袴……毎朝の習慣で、ヘネラリーフェは重い真剣を使った素振りを毎日欠かしたことがない。
汗を拭きながらヘネラリーフェが瀟洒なモーニングルームへと入ってくる。
「一体何本目だと思っているんだ？」
「ごめん、ごめん」
調子が良いと、ついつい辺りの物を切り倒してしまうヘネラリーフェなのである。まったくもって危険極まりない。
「竹が５本、他多数……」
その中には、大理石製の豪奢なテーブルも入っている。
鍛錬とは言え、あまりに高価な代償だ。
「素振りだけにしろよ」
「明日からは気を付ける」
ニ〜〜ッコリと笑うヘネラリーフェの表情を見て、ロイエンタールは（いや、こいつは、きっとまたやる）と思い、溜息を吐いたのであった。
「それにしても、５本も倒しちゃったのかぁ」
勿体ないことしちゃったなぁ……
ヘネラリーフェが呟く。が、数瞬後良いことを思い付いたとでも言いたげに、彼女は両手を打って立ち上がった。
「流しそうめん大会をやろう！！」
「はぁ？」
いつもは冷静なロイエンタールの端麗な口元から素っ頓狂な声が上がる。
「折角竹があるのだから、この際半分に切って、流しそうめんをやろうって言ってるの」
どうせなら、諸提督達も招いて♪
「楽しいわよ〜〜」
「ただ、そうめんを食うだけだろ」
「ノンノン、ロイエンタール」
流しそうめんは、早い者勝ちの言わばバトル！！
「上下関係は関係なし！！ 食い気のある者が勝ち抜くバトルなのよ！！」
熱く語るヘネラリーフェの言葉に、ロイエンタールは再び深々と溜息を吐いたのであった。
ワイワイガヤガヤと、今夜のロイエンタール邸の庭は賑やかである。
招待されたのは、ミッターマイヤーにファーレンハイトにミュラー、ケスラー、ビッテンフェルト、メックリンガー、ルッツ、アイゼナッハと、それに、なんと興味をそそられたラインハルトとキルヒアイスまで参加するという豪華さだ。
ロイエンタール邸の二階からは、半分に割られた竹を何本も繋げた水路のような物が、階下の庭へと伸びている。竹の最後の部分には、子供用のビニールプールが置かれており、準備万端だ。
「じゃ、流しまぁ〜〜す♪」
二階からヘネラリーフェが叫ぶ。
と、同時に、水と一緒に冷やしたそうめんが、ひとさじづつ流されていく。
それとばかりに流れてきたそうめんに飛びついたのは、想像通り（？）ラインハルトとファーレンハイトであった。
「わ〜 凄い！！」
ここから見ていると、性格がわかるわ〜〜
ヘネラリーフェがケラケラ笑いながら階下を眺める。
貧乏暮らしが長く、食うにも困っていた経験の持ち主であるラインハルトとファーレンハイトの食いっぷりには壮絶なものがあった。
方や皇帝、方や上級大将とは思えない所行である。
それとは逆に
「なんだ、俺の所には全然こないぞ〜〜！！」
と、叫んでいるのはビッテンフェルト。
「意外ね〜〜」
そう言って笑うヘネラリーフェに、ロイエンタールが言った。
「あいつ、ああ見えて、結構育ちが良いんだ」
生まれは庶民だが、暮らしに困っていたわけでもないし、家族にも恵まれている。
「他の奴らも、境遇や家庭環境は違うが、それぞれ平和に成長を遂げたようだな」
ロイエンタールの見解のまま、その他の提督達は、それぞれそうめんを得る方法を見付けたと見え、それなりに上品にそうめんを口に流し入れている。
「俺の分はないのか〜〜〜！！！」
竹の末端ではビッテンフェルトはまだ叫んでいる。
ヘネラリーフェは、涼しげなガラスの器に盛られたそうめんを持って階下に降りると、
「はい、どうぞ独り占めして下さいな」
そう言って、微笑みながら器を渡した。
ビッテンフェルトの顔に喜色が走る。
「Danke！！」
ビッテンフェルトは嬉々としながら器を受け取ると、芝生の上に胡座をかいて、一人そうめんをすすり始めたのだった。
「おい、同盟では、こんな馬鹿馬鹿しいことをやっているのか？」
ロイエンタールの疑問にヘネラリーフェは笑って答えた。
「一番がっついているのは、Ｒ・Ｒだわね♪」
笑顔が弾けた瞬間であった。
Fin
お話の冒頭の部分の真面目そうな文章はなんだんだ？と言われてもしょうがない程の、ただの莫迦話です(^^ゞ
（あ、リーフェが結構な剣客ってな設定はマジです。）
夏と言えば、そうめん！！
普段はお上品な諸提督達ち莫迦をやっていただくのも一興でしょう（笑）
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