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ヘネラリーフェの誕生日が１２／２だとロイエンタールが知ったのは、もうクリスマスシーズンを迎える頃だった。
プレゼントを渡すには些か遅すぎる時期まで気付かなかった失態にロイエンタールは舌打ちをする。
そうなると、クリスマスにビックリさせてやるしか手はないが……
ロイエンタールは執務中に口唇を指で一撫でしながら考え込んだ。
とろとろと眠りの世界を彷徨っていたヘネラリーフェの意識が徐徐に覚醒していく。
起きあがろうとすると、低い声で「まだ眠っていろ」と言われながら、毛布ごと乱暴に頭を押さえつけられた。
無体な行為に抗議の声を上げようとしたが、それよりも睡魔の腕の方が強く、ヘネラリーフェは再び眠りに墜ちた。
躰に伝わる微かな振動が睡魔を引き寄せたのかもしれない。
次にヘネラリーフェが睡魔の腕から解放されたのは、何時間後のことか……躰に伝わっていた振動は既になく、ノロノロと起きた彼女は、やっと自分が車に乗せられていたことに気付いた。
「ロイエンタール？」
探す人の名を呼ぶものの、返事はない。
ヘネラリーフェは、毛布の海から早々に車の外へと出て、そこで悲鳴を上げた。
寒かった。とにかく、寒くて、すべてが凍り付きそうな世界が広がっている。
慌てて車の中に戻ろうとしたヘネラリーフェを、ロイエンタールの声が留めた。
肩から着せ掛けられる柔らかくて暖かいもの。
白いファーで縁取られた深紅のケープ式のコートだ。
ここでやっとヘネラリーフェは自分の姿が夜着一枚であることに気付いた。どうりで寒い筈である。
「ほら」
ロイエンタールがぶっきらぼうな声で差し出したのは暖かい缶コーヒー。
「乾杯」
二人でクスクス笑いあいながらそんなことを呟いて……
二人で車のフロント部分に腰掛けて飲む夜明けのコーヒーは最高だった。特に、目の前に大海原が広がっていれば……
「綺麗ね……」
ロイエンタールの身体に自らの躰を寄せて呟く。
「そうだな」
そう語ったきり、他に何も語らず無言の二人だったが、心は満たされていた。
不意にヘネラリーフェが天を仰いだ。
「あ、雪」
そっと手を差し出すと、ヘネラリーフェの華奢な指に粉雪が落ちて、そして溶ける。
「ステキ。ホワイトクリスマスになるかな」
嬉嬉とした声で言うヘネラリーフェの姿にロイエンタールが目を細める。
「満足したか？」
『え』というような表情をしたヘネラリーフェに、ロイエンタールが照れを隠すように、ぶっきらぼうに言った。
「誕生日とクリスマス、両方のプレゼントだ」
「ロイエンタール……」
次の瞬間、ロイエンタールはヘネラリーフェにしっかりと抱き締められていた。
「ありがとう」
とっても素敵なプレゼントだわ。
夜明けの色の空と、大海原から聞こえる潮騒と音色と、暖かいコーヒーと……
ささやかながらも、とっても大きなプレゼント。
ヘネラリーフェは、ロイエンタールを抱き締めながら、少しだけ涙ぐんだ。
ちなみに雪はその後も降り続き、ヘネラリーフェが望んだようにホワイトクリスマスになったようである。
ロイエンタールのお誕生日祝い作品は書くのに、リーフェの方を書いたことがなかったので、書いてみました。
ちなみに、彼女は１２／２生まれです。
でも、蒼乃の裏設定では、誕生日にも秘密が・・・
ともあれ、大分おくれちゃったけど、リーフェちゃん、お誕生日おめでとう。
クリスマスと一緒になっちゃってゴメンね。
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