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その日は朝からひどい嵐であった。
ロイエンタールの出府を見送った後、特にやることもないヘネラリーフェは、雨が苦手ということもあり、私室のベッドの上で羽根布団を被って蹲っていた。
「雨は嫌い…… 孤独になるから」
ポツリと呟いても応えてくれる人はいない。
古傷が疼いているような感覚さえ抱き、ヘネラリーフェはそのままベッドに横になると、とろとろと眠ってしまったのであった。
一方、出府したロイエンタールの方も、あまりの嵐の激しさに、私邸にいるヘネラリーフェを案じていた。
彼女が雨嫌で、しかもこの嵐である。
「怖がっていなければ良いが……」
それに、古傷が痛みだしているかもしれないことが、心配だった。
更に、孤独感に苛まされていないかという心配の種もある。
とはいえ、今は仕事中。しかも統帥本部総長であるロイエンタールが、仕事を放りだして飛んで帰って逞しい腕であの華奢な肢体を思い切り抱き締めてやりたいという願望も、心の奥底に仕舞い込むしかないロイエンタールであった。
がが！！ 自体は急速展開を示し始めたのである。
この嵐の所為で、各地で暴風警報や洪水警報が出始め、帰路を確保出来ない者も出てくるだろうと、皇帝ラインハルトから、午前中一杯で帰宅して良いとの許しが出たのだ。
ロイエンタールが内心でガッツポーズをとったことは、言うまでもない。
ロイエンタールが帰宅すると、車寄せに横付けにされた公用車から降りた彼の元に、ヘネラリーフェがタオルを手に走り寄ってきた。
半分はどうして仕事を切り上げられたのかという疑問があるものの、嵐の中、彼の存在は頼もしい。
車寄せから邸内に入ってロイエンタールは、激しい風雨に僅かながらも晒されたおかげで、髪や軍服が濡れている。
ヘネラリーフェは慌てて彼の軍服を拭きながら、そっと囁いた。
「ね、ちょっとだけ屈んで」
言うとおりにロイエンタールが少し屈んでみせると、今度はタオルがフワリと頭部に被され、そして華奢な手が彼の濡れた髪を優しく拭い始める。
その優しい手の感触が嬉しくて、私室に行っても尚、ヘネラリーフェに髪を拭ってもらったロイエンタールであった。
雨に揺れたロイエンタールの髪をヘネラリーフェに拭わせたいという願望だけで書いたお話です(^^ゞ
台風の所為で東海地方は雨・風共にものすごい天気。
それを見ていて思い付きました。
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