ヘネラリーフェの琥珀色の髪は、時に金茶に輝き、柔らかく流れ、例えようのない美しさであり、また極上の絹糸のような触り心地ある。
 誰もが一度は触れてみたいと思うその髪を、今好き放題に触れられるのは、ロイエンタールしかいない。

***

 初夏の日差しが眩しいある日、不意にヘネラリーフェが呟いた。
「髪、切ろうかな」
 まだ初夏だというのに、ここの所随分暑い日が続き、汗を掻いた肌にまとわりつく髪が鬱陶しくてしょうがないのだ。
 だが、そこでいち早く反応した人間がいた。
 無論、言うまでもなくロイエンタールだ。
 ヘネラリーフェの呟きを聞いた直後、低く否を告げた。
「駄目だ」
「どうしてよ〜〜」
「その長さが触るにの丁度良いから」
 これではまるで猫か犬扱いである。
「何よ、その理由は〜〜」
 ふくれっ面のヘネラリーフェを残してロイエンタールが慌てて出掛けたのは、その直後であった。
 さて、帰宅したロイエンタールが帰宅したときには、両手に余るほどの本だった。
 それも、全て女性のヘアスタイル関連の本や雑誌である。
 ロイエンタールが時に突拍子もない行動を取ることは、ここまで一緒に生活しているヘネラリーフェにも理解できたが、まさかここまでやるとは・・・彼女は内心で派手な溜息を吐いた。
 そう、ロイエンタールが買って来たのは、ありとあらゆるヘアスタイルを特集している本ばかりだったのだ。
 そして、その日からヘネラリーフェの髪を結ったりセットしたりするのは、ロイエンんタールの仕事、否、特権となった。
 時に「痛い」と悲鳴が上がるのは、ご愛敬である。


Fin

*かいせつ*

急に浮かんだネタなので、超短編です、
でも、どうやらヘネラリーフェの髪にさわれる特権を得たのはロイエンタールにようですね(笑)
これで、おやぢなんかが嫌がらせに登場すると……血の雨が降るんでしょうね(^^ゞ

2004/06/04 かくてる♪ていすと 蒼乃拝